脱出

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「面倒かけてすまなかったな。
俺ならもう大丈夫だから…」

横たわったままそう言うザイの顔色はまだ青い。



森を越えた山の中に、小さな洞窟をみつけた一行はそこで束の間の休息を採る事にした。

「無理をなさらないで下さい。
ここまで来たらきっともう大丈夫です。
後はゆっくり山を越えていきましょう。」

「そううまく行けば良いがな…
……ところで、その竜人は…?」

ザイはアーサーに視線を移した。



「この方はアーサーさんです。
この方が私達を助けて下さったんです。
アーサーさんは竜人の姿をしておられますが、元は人間だったということです。」

「元は人間?どういうことなんだ?」

「実は…数年前、イシュバラ樹海に薬草を採りに行った時に私は魔物に襲われました。
近頃では、あそこは魔物の数も減っていたため、油断してしまったのです。
突然、数匹の強暴な魔物に囲まれあわや…という時に、竜人が現れ、その竜人が魔物達を倒したのです。
私はその竜人に食われるのだと覚悟しました。
ところが、意外なことにその竜人はそうはしなかったのです。
他愛のない会話を少し交わし、明日もまた来るようにと言われました。
私は、意味がわかりませんでしたが、次の日の同じ時刻に、また同じ場所へ行きました。
愚かだと思われるかもしれませんが、私は竜人に命を救われたのですから知らん顔をするわけにもいかなかったのです。
すると、竜人が待っていて、その日もまた前日と同じように話をして帰りました。
そんな日が何日か続いた頃、竜人はとんでもないことを言い出したのです。」

「何を言ったんだ?!」

アーロンが興味ありげに身を乗り出した。

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