一難去ってまた一難!

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「ナルク村だ!」

アーロンを押さえこんだザイが叫ぶ。



「リシャール、すぐにナルク村に行くぞ!
こいつをこのままにはしておけない!」

「おまえ…本当にしつこいな!
俺はこのままで良いって言ってんだろ!」

アーロンの…いや、本来はアーサーの長い足がザイの身体を蹴り上げ、ザイはその反動で転がった。



「おまえをそんなカッコイイままになんてしておけるか!
元の不細工に戻してやる!」

「ぶ…不細工ってことはないだろ!」



「いいかげんにやめんか!!」



マーナの発した大きな声に、二人の動きがぴたりと止まる…



「喧嘩なら外でやっとくれ。
わしは忙しいんじゃ。
さぁ、とっとと帰った、帰った!」

マーナの家を追い出され、三人はロータリナの宿屋へ戻った。







「しかし、アーサーさんはカッコイイ男性だったんですね。」

「なぁ、さっき、ここに来るまでにすれ違った女の子が俺のこと見てたの気付いたか?」

アーロンが得意げにザイに話しかける。



「おめぇじゃねぇ!
アーサーの身体だろ!」

「今は俺の身体だ!!」

「まぁまぁ…お二人とも落ちついて…!」

すぐにも取っ組み合いになりそうなザイとアーロンの間に割って入る。



「とにかくこれで旅がしやすくなりましたね。
それだけでもありがたいことですよ。
……では、私はお先に休ませていただきます。」

「お先にって…まだ夕食も食べてないだろ…」

「今日は食欲がありません…」

そう言って、奥の部屋に入って行くリシャールの背中には、なんともいえない哀愁が漂っていた…



「昨日、一体、何があったんだろうな…?」

「聞かないでやるのも優しさだと思うぜ。」

「俺のために、申し訳ないことしちまったな…」



リシャールとマーナの過した一日の事は、その後も語られることはなかった…


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