一難去ってまた一難!

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ぼったくりも良い所のフード付きマントとネッカチーフのおかげで、その後もアーサーが人目をひくことはなかった。
一行はほぼ順調に旅を続け、一週間後、ようやくグレゴラスの町に着いた。
リシャールにもう少し体力があれば、おそらく四日程で着いたはずの道程だった。



「ここだな、三つ子婆さんの一人がいるって町は…」

すでにその名を忘れ果てたアーロンが、あたりを見まわす。
通り掛かりの男に聞いてみると、魔法使いの婆さんというキーワードだけで、いとも簡単にラーナの家がみつかった。
ラーナはグレゴラスの町のはずれに住んでいるとのことだ。



「やっぱり、魔法使いって少ないんだな。」

「そりゃそうだろ。
誰もが使えるようなもんじゃないからな。」

「そういや、おまえも魔法が使えることをずっと黙ってたよな。」

「自分から言うようなことでもないからな。」

「そうか?俺だったら言うけどな。」

「……だろうな。」

「あーーーーっ!なんだよ、その冷ややかな目!」

「別にぃ…」



「……本当にアーロンさんとユヒト殿は仲が良いんですね…」

走り回る二人を見て、リシャールがぽつりと呟いた。



「そういえば、皆さんはなにか目的があって旅をされているのですか?」

「実は…信じられないかもしれませんが、我々は、ヴェーラ様に選ばれた勇者なのです。」

「勇者…!!」

アーサーの驚きは尋常ではなかった。
即座に飛び退き、リシャールをみつめる瞳には怖れのようなものが宿っていた。
しかも、その身体は小刻みに震えている。



「アーサーさん…どうかされましたか?」

「い……いえ、なんでもありません。
そうですか…あなた方はヴェーラ様に選ばれし勇者だったのですね。」

「ええ…私と…」

ユヒト殿が選ばれたのです…リシャールがそう言葉を続けようとした時、アーロンの大きな声があがった。
ラーナの家を発見したということだった。
リシャールとアーサーは、二人の元に駆け出した。


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