勇者は旅立つ
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「あほか、そんなわけないだろ!
これは、すべてリシャールと俺が倒したんだ。
おまえ、見てなかったのか?」
咄嗟につまらない嘘を絡めて、ザイが答える。
「あ…あぁ、俺、爬虫類は苦手だから、ずっと目をつぶってたんだ。
そうか、おまえ達が助けに来てくれたのか。
まぁ、あのくらいなら俺だけでもなんとなかったんだが、一応、礼を言っておくよ。
……って、リシャールはどこなんだ?」
「それが…竜人に連れ去られたんだ…」
「えええーーーーー!!!」
「あと少しだから俺が手を貸す程のこともないと思って俺はあっちの方で戦ってたんだが、いきなりリシャールが倒れて…
一体、どうしたんだろう?」
「そういえば…」
「何か知ってるのか?」
「いや、関係あるかどうかはわからないが…
『30分』とかなんとか聞こえたような気がするんだ。」
「30分…?なんだ、そりゃ…
それより、困ったことになったな…」
「そうだ!リシャールを助けに行かなきゃ!」
「助けるってあいつらがどこに行ったのかもわからないんだぞ。
どうするつもりだ?」
「こんな時は、とりあえず町に戻って誰かに竜人のことを聞くっていうのが、セオリーってもんじゃないのか?」
「まぁ…そうかもしれないな。
とにかくここにいても仕方ない。
帰るとするか……な、なんだ!!」
アーロンに背を向けた途端、ザイは背中に重いものを感じた。
「松葉杖がこんな有様じゃ歩けないからな。」
「ば、馬鹿!
なんで、俺がおまえをおぶって行かなきゃなんねぇんだ!
降りろ!!降りやがれ!!」
「やだね!俺は絶対に降りないからな!」
背後霊よりもぴったりと、アーロンはザイの背中に貼りついた。
ザイがどんなに暴れようとも、アーロンはその腕を離さない。
やがて、アーロンを振りほどくことを諦めたザイは、小さな溜息をひとつ吐いて町を目指し歩き始めた…
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