合わせ鏡
勇者は旅立つ
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(うぅ…どうしよう…?!)
揺れ動くザイの耳に、上ずった叫び声が届いた。
「どりゃあああああああ〜〜〜!
こ、この、トカゲ野郎め!
お、俺は、トカゲなんかちっとも怖くないぞ!!
カエルの肉を食べたことだってあるんだからな〜!!」
意味不明のことを叫びながら、男は、何かをめちゃめちゃに振りまわしている。
(なんだ、あいつ…
あ、あれは、アーロンじゃないか!!
……なんだ…襲われてたのはアーロンだったのか。
そうとわかれば、わざわざ助けに行くことはないな。
あんな奴のために、危ない目にあうことなんてないもんな。
うん、そうだ。そうだ。)
自分の勝手な言い訳に、ザイは納得して何度も頷く。
アーロンの振りまわしているものは松葉杖だった。
そんなつまらない武器に竜人の中の数人はうちのめされ、その場に倒れていく。
(……あんなものにやられるとは、竜人もたいしたことねぇな…)
現在、無傷で戦っている竜人は後わずか…
この分なら、リシャールがなんとかしてくれるだろう…
そう思われた時…
突然、リシャールの身体がバランスを崩し、そのままばったりと倒れてしまった。
何が起こったのかわからない竜人達は一瞬動きを止めたが、数人が寄り添って何か話をしたかと思うと、そのうちの一人がリシャールを抱え、空に飛び去った。
それをきっかけに残りの竜人達も次々と空へ飛び去って行く…
その場に残ったのは、リシャールに倒され亡骸となった竜人達とおかしな声をあげながらめちゃめちゃに松葉杖を振りまわすアーロンだけだった…
「アーロン!」
あたりに生きている竜人がいなくなったのを確認して、ザイが茂みから飛び出した。
自分の名を呼ばれ、アーロンがやっと目を開けた…
「ザイ…
も、もしかして…この竜人達は俺が…」
大地に倒れる竜人達の亡骸を見たアーロンが呟く…
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