合わせ鏡
勇者は旅立つ
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「ぎゃあああああか〜〜〜!
誰か、助けてくれ〜〜〜!!」
大勢の者に周囲を囲まれた男が叫び声を上げている。
その声から推測すると、その中心にいるのは若い男のようだ。
「あ…あれは…竜人ではないか!!」
「竜人?……なんだ、そりゃあ?」
「ユヒト殿、竜人をご存知ないのですか…!
竜人というのは…あぁぁ、今はそんなことを説明している時ではありません!
とにかく、とても手強い相手です。
十分に気を引き締めて戦って下さい!!」
「……え?!
俺も戦うのか?!」
その返事を言う前に、いつものリシャールとは別人のようなリシャールが勇ましい雄叫びを上げながら、竜人達の群れに突っ込んでいく。
その声に、一斉に振り向いた竜人の顔はトカゲそのものだった。
(げっ、竜人って…トカゲのことだったのか!?
……俺、爬虫類は苦手なんだよなぁ…)
自分に竜人達の注意が注がれていない事を幸いに、ザイは静かに茂みの中に身を隠す。
(ま、あいつの腕前なら、俺なんかがいなくても大丈夫だよな。)
茂みの中で息を潜め、ザイは竜人達とリシャールの戦いをじっと見守る。
体格的には人間とほぼ変わらない。
鎖帷子のような武具を身にまとい、剣まで携えているその姿は、遠目には人間にしか見えないが、その皮膚と顔は人間のものとは大きく違う。
(見るからに堅そうだもんなぁ…)
竜人達の堅い鱗状の皮膚は、リシャールの腕前をもってしてもそう簡単には貫けないようだ。
次第に竜人達の数は減っては来ていたが、リシャールが激しく疲労していることもその動きから明らかだ…
リシャールは、肩で大きく息をしている。
(もしかして……ヤバイ感じ…?)
自分も出て行くべきか?
きっと、そうすべきだ…
そうは思いながらも、やはり腰がひける。
なんといっても、メレハ村では魔物自体見た事がなかった。
当然、魔物と戦ったこともまるでない。
先日の魔物退治も結局、ザイが何もしないうちにリシャールが全て片付けてくれたのだから。
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