囚われて…
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アーロンを担いでの帰途だった事も相俟って、ザイ達がイシュトラの町へと戻った時には既に陽は昇りきっており、宿屋へと戻る暇も惜しんでそのまま竜人についての情報収集に奔放する羽目となった。
「・・・・・・・」
近くの石垣に腰を下ろし、広場で遊ぶ子供達を眺め遣るザイの横顔が険しい。その唇から盛大な溜め息が洩れ、苛立たしげに絳髪をかき上げる。真紅の双眸が天を眺め遣れば、そこには目に痛い程の澄んだ青空が広がっていた。が、そんな清々しい世界とは裏腹に、ザイの心中は穏やかではない。
「ザイ!お前、こんな所で何サボってんだ!」
掛けられた聞き慣れた声に鬱陶しげに視線をそちらに向ければ、新しい松葉杖を突きながらこちらに歩いてくるアーロンの姿が視界に入った。
ザイの眉間に刻まれた皴がより深いものになり、忌々しげな舌打ちが響く。
「ザイ!リシャールが攫われたっていうこの非常時に、お前は何呑気に空なんか眺めてるんだよ!」
少しは真面目に情報収集をしろと、ザイの目の前に立ったアーロンの叱責に、彼の機嫌は更に悪いものになっていく。その真紅の双眸が瞼の裏に隠されれば、髪に遣っていた手が乱暴に膝へと落とされる。
「だいだい、お前は・・・・・ッ!?」
突然響いた打音に、長々と説教を続けていたアーロンは驚いたようにその双眸を大きく瞠った。
真紅の双眸が顕わになれば、上げられたザイの突き刺さるような視線がアーロンを射抜く。
「…うるせぇよ。こっちはお前を担いであの深いイシュバラ樹海を抜けてきて疲れてるってのに。耳元で騒ぐな」
地獄の底から響いてくるような低音に、アーロンは恐怖に顔を引き攣らせる。自分を見上げてくるザイの真紅の双眸が孕む殺気が、怖い。
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