海を越えて
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「あぁぁぁぁぁーーーー!」
海中に沈み行くアーロンの身体を、巨大イカの足が捕まえ引き上げた。
「こ、こらぁ〜〜!ザイーーー!
なんてことしやがるんだ!」
叫ぶアーロンの身体は、巨大イカの長い足に巻き突かれ、身動き一つ取れない。
『しっかりとつかまっておるのだぞ。』
「は、はいっ!」
リシャールとザイが小舟の縁にしがみつくのを見た巨大イカは、長い足を振り上げそのまま海中に差しいれると山のような大波を作り出した。
「うわぁぁぁぁ〜〜〜!」
大波は、目にも停まらぬ速さで小舟をシュリアに運んで行く…
息もつけない程のスピードに、振り落とされないように必死で舟にしがみつく二人の意識が薄れた頃、ようやく小舟の速度がおさまっていった。
「あ…あれは…」
朦朧とする二人の目に映ったものは、木々の濃い緑色に覆われたシュリアの大陸だった。
「や…やった!
シュリアに着いたんだ!」
緩やかな波に押されながら、しばらくすると小舟はシュリアの港に辿り着いた。
港に着いた二人を、船員達が信じられないといった顔で出迎えた。
ザイは、巨大イカとのいきさつを話し、ポセイ・メルティ像の修理のことと海神祭のことを伝えた。
船員達はアヘナの者達と話し合いの上、像は必ず修理し、祭りも欠かさないことを約束した。
「じゃあ、行こうか!」
ザイは振り向き、明るい顔でリシャールに声をかけた。
「行こうかではありませんよ!
アーロンさんをあのままにしておくつもりですか!」
「そんなこと言ったって、あの場合、他に何か良い手があったか?
元はといえば、あんたが魔物退治に行こうなんて言い出したからこんなことになったんだぞ!
あのままだったら、俺達は三人共海の藻屑と消えていたはずだ。
その上、船は襲われ続け、どれだけたくさんの命が奪われたかわからないんだぞ!
それらを救い、しかもシュリアまで辿り着けたのは俺の機転のおかげだ。
感謝こそすれ、非難される筋あいなんかない筈だが…!」
「そ…それは…
しかし、アーロンさんは…」
「そんなにアーロンのことが気になるんなら、あんたが一人でなんとかすれば良いじゃないか。
俺は知らないからな!」
そう言い残して立ち去るザイの後姿をみつめながら、リシャールは途方に暮れるのだった…
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