一難去ってまた一難!

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「何と酷い事を!アーサーさんは、自分の命の危険も顧みずに私達を助けてくださった方です!そんな事は、絶対に有り得ません!」
 柔らかな陽光が降り注ぐ周囲の柔らかな光景に反して怒りを顕わにするリシャールの姿に、ザイは旅立ちの日の彼を垣間見た。
 叩かれた頬の痛みは既にないが、あの時もこうして怒られたのだ。
「貴方には、人を信じるという心がないのですか!?」
 リシャールの詰問に、黙って彼の怒りを聞いていたザイは、嘲笑に似た笑みを洩らした。
「アンタは、人を信用し過ぎだ」
「ザイ!」
 いつか贈った言葉で相手を挑発する事で、ザイは問いへの返答をはぐらかす。
「所詮、推論の域を出ない無駄な議論。その善悪を説いた所で意味はないさ」
 未だ怒り冷めやらぬといった体のリシャールに背を向け、ザイは歩き出す。
「会った時に、確かめればいいだけの話だ」
 目的地へと辿り着けば、強制的にザイは会話を終了させる。閉ざされた扉を軽く叩けば、少し間を空けてから内側に開かれた。
「おや、お前さん達かい。まだわしに何か用かね?」
「婆さんに占って欲しい事があるんだ」
 些か驚いた様子のラーナに、ザイの説明は端的なものだった。初対面ではないとはいえ、些か礼節を欠く彼の態度に背後のリシャールが咎めるようにザイの服を引っ張ってくる。
 うるさそうにその手を払うザイと先程の怒りも相俟ってか粘り強く叱ろうとするリシャールの静かなる対立を無言で眺めていたラーナは、その皴だらけの顔に優しい笑みを浮かべた。
「―――お入り」
 短く告げて、彼女は家の奥へと引っ込んでしまう。
 初顔合わせの時に叱責をもらったザイであったので、文句の一つや二つや三つは飛んでくるかと思っていた二人は、何だか肩透かしを食らったような気持ちで導かれるままに二度目の来訪を果たした。
「適当に座っとれ」
 そう言い残していくつかある扉の一つに姿を消したラーナに従い、ザイとリシャールは部屋の中央に置かれた木の椅子に並ぶようにして腰掛けた。
 待つ事数十秒。扉が開き、水晶玉を手にしたラーナが二人の対面に座った。敷物の上に恭しく置かれたその水晶玉は青白く濁っていて、それがただの装飾品でない事を暗に告げている。
「――それで?わしに、何を占ってもらいたいんだね」
 客人を家に上げるなりいきなり本題に入ってきたラーナに、リシャールが事の次第を簡単に説明する。

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