一難去ってまた一難!

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「――…成る程ねぇ」
 簡潔でありながら要点をついた分かり易いリシャールの説明を聞き終えたラーナは、呆れとも同情とも取れる溜め息をついた。
「そりゃあ災難だったね、その子は。自分の体を取り替えられちまうなんてさ」
 愉快そうに笑う魔女に、笑い事ではありませんと律儀なリシャールが反論するもここは年の功。全く以って迫力などない。
「しかし、それが星が定めた道ゆえな。選ばれし勇者ならば、避けては通れぬ道じゃ」
 緩やかな雰囲気とは一転、意味深な発言に、リシャールとザイ、その規模に違いはあるものの驚きを含んだ瞳でラーナを凝視する。
「わしは、占師。自然界の理に耳を傾け、時の流れを読み解く者。解らぬはずがないじゃろう」
 若年者二人を驚かせる事で急の訪問の非礼と無礼な振る舞いの代償を受け取った老齢の魔女は、その表情を改めた。
「さて。アーサーとかいう童の行き先だったね」
 水晶玉に両手を翳し、目を閉じたラーナはすっと息を吸う。そのまま意識を手元に集中させ、自然界の流れに自らを任せた。世界を廻る風に乗り、意識が肉体から剥がれ落ちる。
 閉じた瞼の向こう側がほのかに青白い輝きを放ち始め、翳した両手が熱を感知する。天下一品の腕を持つ占師は、捜し人の行き先を告げる水晶玉の応えを確かに受け取った。
 ゆっくりと意識を森羅万象から引き剥がし、ラーナはゆっくりと瞼を開ける。
「――…ナルク村に、向かっておる」
 占いの結果を告げる彼女の表情が、些か硬いように見えるのは恐らく気のせいではないだろう。
 ナルク村。アルヘレナを統べる、万物の大神であるシュリナルクの名を冠する村を知らぬ者はいない。そして、それが意味する事に、少し頭の回転が速ければ容易に辿り着く。
「アーサーさんの目的地は、ティアト神殿ですね?」
 創造主シュリナルクだけではなく、十神聖と称される、アルヘレナを護る全ての神を祀る神聖なる場所。それが、ティアト神殿。

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