一難去ってまた一難!

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ロータリナの町までは、馬車を使ったため、考えていたよりもずっと早くに着くことが出来た。



「やっぱり馬車だと早いなぁ…
これからも移動は馬車にしないか?」

「駄目です!
私の体力がこんなにも虚弱なのは、馬車でばかり移動していたからだとおっしゃったのは、ユヒト殿!あなたですよ。
今回は、事情が事情ですから仕方ありませんが、次からは馬車には乗りませんからね!」

「はいはい、わかったよ。
……そういやぁ、アンはどうした?」

「アーロンさんですか?
あれ?」

二人があたりを見渡すと、道の片隅にうずくまる黒い塊が目に映った。



「あんな所でなにやってんだ?あいつ…」

「そういえば、馬車の乗るのは初めてだってえらくはしゃいでたけど、しばらくしたら静かだったな。
寝てるのかと思ってたんだが…」

アーロンの態度を怪訝に思いながら、二人はアーロンの傍へ近付いた。



「おい、アン!
そんな所で何してんだ?行くぞ…」

「う…ううぅ……」

苦しげに眉間に皺を寄せ、涙のいっぱいたまったすがるような瞳を二人の方へ向けながら、その片手は口許を押さえていた。
竜人の皮膚に顔色というものを現す機能があったなら、今のアーロンの顔色は蒼白だったに違いない。



「……俺達、先に宿屋に行ってるから、暗くなったら来い!
行くぞ、リシャール!」

「え?でも、アーロンさんが…」

「良いから、良いから。」

ザイは、リシャールの背中を押しながら町の方へ歩いて行く。




「ユヒト殿、アーロンさんを放っておいて大丈夫なのですか?
なにやら様子がおかしいようでしたが…」

「大丈夫だ。
ただの馬車酔いだから、じきによくなるさ。
それまでの間、俺達はマーナ婆さんの家でも探そうぜ!」



(馬車酔い…!?)

ザイに言われ、リシャールはようやくアーロンの異変の原因に思い当たって頷いた。

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