一難去ってまた一難!
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「おはようございます。」
「あれ?アンはどうしたんだ?」
次の日の朝、そこにアーロンの姿はなかった。
「ザイ、寝ぼけてるのか?
俺ならここにいるじゃないか。」
「は…?」
「アーサーさん、今日はなにやら口調がおかしいですね。」
「はぁ?……おまえら、俺のことをからかってるのか?」
「アーサーさん…」
「だから、俺はアーロンだって言ってるだろ?!」
その言葉に、リシャールとザイは顔を見合わせた。
「あ…あの、これを…」
リシャールが、様子のおかしいアーサーに手鏡を差し出した。
その途端、部屋の中に獣のような叫び声が広がった。
「な、な、な、なんで、俺がとかげになってるんだよ!!」
「ま、まさか、おまえ、アーサーじゃなくてアンなのか?」
「そ、そうだよ!
なのに、なんで俺がとかげに?」
「そういえば、アーサーさんはどこに…?
ちょっと宿の人に聞いて来ます!」
リシャールは、部屋を出て行った。
「げーーーーっっ!顔だけじゃないぞ!
全身とかげだ!
鱗があるぞ!気持ち悪ぃぃーーー!!」
自分の身体を見て蕁麻疹をこさえ、身悶えるアーロンに、ザイは溜息を吐いた。
(なんて哀れな奴…)
「大変です!
アーロンさんらしき人が、今朝、早くに旅立って行ったそうです!」
リシャールが宿の者に話を聞いた所、夜が明けてすぐにアーロンらしき者が旅立って行ったということだった。
服装は剣士のものだったということだから、アーサーのものだと思われた。
「じゃ…じゃあ、もしかしたら、アーサーが俺の身体を持ってったってことなのか?」
「そうとしか思えんな…
しかし、なぜよりにもよっておまえの身体を…」
「アーサーさんはやはり魔法の知識をお持ちだったんですね。」
「おいおい、そんなこと言ってる場合じゃないだろう!
早くアーサーを追いかけないと!」
「待て!おまえ、そのままだと町の者に捕まるぞ!」
「あ……」
ザイのその言葉にアーロンの足がぴたりと停まった。
「そうだ!」
リシャールがクローゼットをのぞくと、そこにはあのマントがかけてあった。
「やはり置いていかれてました。
さぁ、アーロンさん、これを…!」
アーロンはリシャールに差し出されたマントを渋々纏う。
「くっそー、アーサーの奴!
絶対、許さないからな!」
身体のあちこちをボリボリと掻きながら、アーロンが叫ぶ。
しかし、アーサーの行き先は皆目わからない。
ザイとリシャールは、今後どうするべきかと頭を抱えるのだった…
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