黄昏時の神風

7ページ/9ページ




 かつて、この学校の屋上で自殺した生徒がいたそうだ。

 何年も前の事で人々の記憶からは忘れ去れたが、この屋上だけは忘れない。



 そこで流された涙の重みを。

 そこで願われた悲しい望みを。

 恋人を事故で亡くし、その姿を求めて空を翔けた、少年の物語を。

 そして、彼は祈る。

 残された者達へ。

 失った者達へ。

 その二本の足で、大地を駆けていけ、と――。



【次へ】/【前へ】