合わせ鏡
勇者は旅立つ

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「あ〜あ、置いてかれちまった。」

「あ…あれは…あの時の!!」
「しっ!」

両腕を大地に着け、がっくりを肩を落として泣き崩れるリシャールを、二人の男たちが物陰から見つめていた。



「この前のあいつじゃないか!…あいつ…一体、何やってるんだ?」

「さぁな…でも、おそらくは喧嘩かなんかだな。
もう一人の奴が怒って、それであいつを置き去りにしたんだな。
……だいたいおまえが悪いんだぞ!
あんなに酔いつぶれたから…」

「なんだよ、いきなり。
そんなこと、今、関係ないだろ!
第一、おまえだって、あの時はぐでんぐでんだったじゃないか!」

「それが、関係あるんだな…」

男達は、あの時、リシャールから奪った宝石を事もあろうにイシュトラの道具屋へ持ちこんだ。
そこで、その宝石がすべて本物だと知った二人はそのうちの一つだけを売り、夢心地で酒場に繰り出した。
そこでどんちゃん騒ぎをして酔いつぶれた所を、町の自警団にとっ掴まったというわけだ。
二人は、宝石の入った袋は盗んだのではなく拾ったと供述したため、留置場には一晩泊まっただけで釈放されたのだった。



「あいつが、ビアンキ家の若様だったとはな…」

「道理であんなすごい宝石を持ってるはずだな。」

「よし、今度こそ、あの宝石をいただくぜ!」

「宝石を…?
どうするつもりだ?」

「どうするって…
あいつをかどわかすんだ!」

「えっ?!かどわかす?」

「そうさ、そして、身代金としてあの宝石をいただく。」

「どうやって?!」

「俺に任せとけって!とにかく、おまえはなんでもいいから俺の言うことに合わせておけ。」

「わ…わかった!」

二人は、リシャールの傍に近静かに付いていく…



「あの…大丈夫ですか?」

男は、リシャールの目の前に白いハンカチを差し出した。

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