勇者は旅立つ
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「あんた…さぁ…
もしかして身体弱いの?」
「いえ…特に弱いということはありませんが、これほど重い荷物を持ってこんな遠くまで歩いた事はありませんでしたから、おそらくそのせいではないかと…」
「なんだ?!そんなことが原因だったのか?
正装だ、寝間着だってそんなにたくさん持って来るからだろ。
それにこんな遠くって…まだ隣町だぜ。」
「私としては最低限の荷物にしたつもりだったのですが…
ヴェーラ様のご期待に添うためにも、私は少し体力をつけなくてはならないようですね…」
「まぁ、旅を続けているうちには体力もつくとは思うが、度々こんな事が起こったら困るからしっかりしてくれよな。
あ、そうだ、早速で申し訳ないんだけど、金をくれるか?
俺、食事代、まだ払ってないんだ。」
「お金ですね。お金なら…
あれ、あれれ?…おかしいですね。」
起きあがったリシャールは自分の腰に下げていた金貨の袋を探すが、見当たらない。
「どうしたんだ?まさか…路銀を落としたのか?!」
「どうやらそのようです…私としたことが…
でも、大丈夫です。宝石がありますから、それを一つ売れば…
あれっ?あれっ?あれれ?」
リシャールは、荷物の中の宝石の袋を探すがそれもまたみつからない。
「どうしたんだ?」
「……ないんです。」
「ないって何が?」
「宝石の袋がないのです!」
「なんだって〜!!
ど、どうするつもりなんだ?!
さっきの食事代とか今夜の宿賃とか…早速困ったことになるぜ!」
「そのことなら心配はいりません。
この町には知り合いがおりますから、その方に立て替えていただくことにしましょう。
しかし、問題はこの先です。」
「家に連絡して持ってきてもらったらどうだ?
ここからならすぐ連絡がつくだろう?」
「いえ…それはなりません。
私にはわかるのです。
これはきっと、ヴェーラ様が私にお与えになった試練なのです!
私がそもそも考え間違いをしていたのです。
勇者という者は清貧でなくてはならない…そのために、ヴェーラ様があのお金と宝石を持ち去られたんだと思います。
ヴェーラ様〜〜〜!私のために、そこまでのご配慮を…ありがとうございます〜〜!」
リシャールはベッドの上で平伏し、涙にくれている…
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