勇者は旅立つ

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(ヴェーラ様がそんなもん持ち去るわけないだろ…
きっと誰かが…そうだ!
こいつが倒れてた時に盗人にやられたんだな!
畜生!町を出た早々、文無しになるなんて勘弁してくれよ!
こいつはなんとかしないとな…)



「だけどさぁ…
実際問題として、明日からの路銀はどうすんだ?
金がなけりゃ宿にも泊まれないし、食べることだって出来ないんだぜ。」

「……私が働きます!」

「働くって何をするつもりなんだ?
まず、あんた、働いたことはあるのか?」

「それは…ありませんが…
でも、私にもなにか出来るはずです。
そうだ!モンスター退治なんていかがですか?」

「モンスター退治ぃ?
あんた、腕っぷしが強いようには見えないが…」

「剣なら幼い頃からたしなんでおりましたから、なんとかなると思うのですが…」

「たしなんでる…ねぇ…」

ザイは冷ややかな視線でリシャールをみつめた。
隣町まで歩いただけでダウンするような奴の剣の腕前など、高が知れている。



(この際だから、お坊ちゃまには多少痛い目を見てもらうとするか。
そしたら、素直にお屋敷からの送金を待つ気にもなるだろう。)







次の朝、ザイは宿に泊まっていた剣士にリシャールの相手を依頼した。

「手加減はいらないからな。
思いっきりのしてやってくれ!
あんたが勝ったら、昨夜の宿賃は俺が払う!
ついでにめしをおごろう!」

「本当か?よし!
では、腹ごなしに一丁もんでやるか!」







「よろしくお願いします。」

リシャールは恭しく剣士に頭を下げる。



「ようし!どこからでもかかってまいれ!」

「いざ!!」

町の者達が見守る中、剣士とリシャールの勝負は始まった。
その手入れの行き届いた剣や鋭い視線、隙のない構えからしても、剣士がそれなりの腕前だということは誰の目にも推測出来た。



(リシャール…
世の中はそう甘いもんじゃないんだぜ。
お坊ちゃんの遊び半分の剣で倒せる程、モンスターはやわじゃないぞ。
そのことをしっかりと学習するんだな。
そして早くお屋敷から金を送ってもらってくれ!)

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