囚われて…
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「どうかしたのか?!」
リシャールのワンマンショーを聞きつけて、一人の男が檻の前に走って来た。
「あ…君は…
そうか、君もついにここに連れて来られたんだね…」
「え……?」
檻の外にいる男は、明らかに金髪ハンサム君のことを知っているようだった。
「覚えてないの?
そうか…無理もない…僕がこんな風になったからわからないんだね。
テリー、僕だよ。カイザーだよ。」
「カ、カイザー!
君があのカイザー?!」
檻の外にいた男は、哀しそうな瞳で微笑んだ。
「僕がここに連れて来られたのは、もう三ヶ月近く前のことだからね…
女王に吸い尽されて、こんなにしなびてしまったんだ…」
「そ…そんな……
君は、僕と同じ年だったはず…なのに…」
そこにいる男は、よく見れば顔立ちは悪くはなかったが、水気のない皺だらけの顔をしていた。
顔だけではない。
皮膚という皮膚には細波のような皺が寄り、腰は曲がり、その姿はまるで老人のように見えた。
「女王は、噂以上の絶倫だよ…
でも、僕は命があっただけまだマシさ…
死んでしまった奴もけっこういるんだ。
気の毒に…君もあと少しで僕みたいになるんだね…
良いかい?なんとか死なないように頑張るんだよ。
生きてさえいれば、こうやって新入りの食事の世話や掃除をすることでここに置いてもらえるからね…」
カイザーは目頭の涙をそっと拭った。
「あ、何があったのか知らないけど、あんまり騒がないでね。
あんまりうるさいと、女王に早く呼ばれるかもしれないよ…」
カイザーはそう言い残して去って行った。
まだ、ワンマンショーの途中だったリシャールも、いつの間にか、ショーを中断して彼の話に聞き入っていた。
「これからは静かにして下さいね…」
「はい…」
その晩、二人は一言も喋らなかった…
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