囚われて…
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次の朝、二人は、けたたましいカイザーの声によって目を覚ました。
「た…大変だ!
ローダンが倒れた!」
「ローダンって、誰なんだい?」
「今の女王の玩具だ。
女王が新しいのを持って来いって…あ…」
そこには、槍を持って武装した竜人が立っていた。
カイザーは黙ってその場を退く…
「おい…そこのおまえ。」
二人は、同時に竜人の方を向いた。
「黒髪の方だ!」
「えっ、わ、わ、私ですか?!」
(ヴェーラ様、確かに酷い罰を与えて下さいとは言いましたが、こんな罰とは…
うぅぅ…)
「リシャール…」
「テリーさん…でしたね。
短い間ではありましたが、お世話になりました。」
「リシャール!!」
ひしと抱きあい涙を流す二人に、竜人の厳しい声が飛ぶ。
「早くしろ!」
リシャールは、手錠をかけられ檻の外へ引きずり出された。
「こっちだ!」
竜人に突き飛ばされるように、リシャールは地下への道を歩いて行く。
丸腰の上に手錠をかけられた今の状況では、何をすることも出来ない。
下手に抵抗すれば、あの槍で突き殺されるのが落ちだ。
(槍で突かれる方が、しなびて死ぬのよりマシかもしれませんが…
しかし、これがヴェーラ様のお与えになった罰ならば…逃げることは出来ない…!
ビアンキ家の誇りに賭けて…!!)
リシャールはきっと結んだ唇を噛んだ。
「ここに入れ!」
地下の最下部にある扉を開け、中に入ると、竜人は、カチャリとリシャールの手錠の鍵をはずした。
「え…?!」
「手荒な真似をして申し訳ありませんでした。
さ、こちらへ。」
呆然とするリシャールを竜人はさらに奥の部屋へと案内する。
「アーロン!」
「リシャール!!」
その部屋のベッドに横になっていたのは、誰あろうアーロンだった。
「これは、一体…?」
「私の名はアーサー。
竜人の呪いによって、こんな姿にされていますが、私は元は人間です。
あなた達の闘いの様子を見て、あなた達ならなんとかして下さるのではないかと思い、こちらへお連れしました。」
アーサーの思わぬ告白に、リシャールは目を丸くする。
「俺は、湖に投げ捨てられた所をアーサーさんに助けてもらったんだ。
まだ、身体が痛むが、なぁに、すぐに良くなるさ。」
「そうだったんですか!
アーサーさん、本当にありがとうございました。
ところで……ユヒト殿はどこなのです?」
「あの方は、魔力を封じこむ真鍮の檻に入れられており、まだ救い出せていないのです。」
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