囚われて…
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元は人間だったというアーサーの案内で、リシャールとアーロンは城内を巡回する竜人と鉢合わせる事無く、ザイの閉じ込められているという真鍮の檻へと続く階段へと出ることが出来た。
「ここから先には、見張りの兵士がいます。恐らく、二人以上は確実にいると思いますが、大丈夫ですね?」
振り返ったアーサーの最終確認に、厳しい表情を浮かべて頷きを返すリシャールをアーロン。
アーサーを先頭に、三人は真鍮の檻へと続く階段を下り始めた。
地下へと続く階段を照らすのは等間隔で壁に備え付けられた蝋燭の灯りのみで、蝋燭の炎に照らされて浮かび上がる三つの影がゆらゆらと揺れる様は不気味だった。
反響する複数の足音。恐らくこの先で待つ相手もこの音に気付いている。
階段の終わりが見えてきたところで、リシャールは腰に佩いた剣の柄を握った。
躊躇いもなく投げ渡されたこの剣は、彼からの信頼だと受け取ってもいいだろうか。
「どうした?まだ、交代の時間では…」
姿を現した同胞に気を緩ませたのか、そう声を掛けてきた相手の言葉はしかし最後まで紡がれることはなかった。薄闇を青白い閃光が走ったかと思うと、呻き声もなく見張りの一人が地に倒れ伏す。
異変を察知した時には既に遅かった。残りの見張りの兵士も、リシャールの見事な剣捌きで片付けた。
「ザイ」
血を払った剣を鞘に収め、一足先に真鍮の檻へと向かったアーサーをリシャールは追う。
「アーサーさん、ザイは…」
視界に入った背中に呼びかけ、その先の光景にリシャールは瞳を見開く。
地面に刻まれた魔方陣の放つ青白い光に包まれたそこに、捜し人の姿はなかった。
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