太陽と月の奏でる場所で

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 我が命を代償にすると、そう告げた従者の赤い瞳に迷いはない。鋼鉄の決意を秘めたその瞳を、主は冷徹なまでの静かな深緑の双眸で見据えた。
 張り詰めてゆく緊張。重い沈黙。
 無言の対峙がどれ程長く続いただろうか。しかし本当は、その対峙はほんの数秒間。
 ゆっくりと、主はその瞼を閉じた。
「――――わかった」
 凪いだ深海の声音が了承を告げる。そのまま席を立ち、彼は部屋を出て行った。
 その背に、ラキは声をかけることが出来なかった。扉が閉ざされ、遠ざかって行く足音を聞きながら、ラキは覚悟を決めた兄を心配そうに見つめた。
 ラウがゆっくりと振り返った。緋色の翼を一度羽ばたかせる。その姿は、彼の犯した罪の証。
「ラキ。すまないな」
「いえ…」
 その赤い瞳に浮かぶ優しい光に、ラキは顔を歪めた。
「兄さん…。後悔は、しませんか?」
 ラキの静かな問いかけに、ラウは瞑目した。それが、答え。
 窓の外は純潔の静寂。さんさんと舞い降りる六花が、地上の全てを純白へと変えていく。




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